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くすりに関する疑問や知らない情報を紹介

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世界で最も売れている薬は?

質問1
世界で最も売れている薬は、どのような病気を対象としているのでしょうか?

答えは高脂血症です。これは血液中のコレステロールや中性脂肪の値が高い状態を表します。

最近の統計では、世界の薬の売り上げベスト20のうちの実に3つが「スタチン系」と総称される高脂血症を対象とするものです。

1位のアトルバスタチン(ファイザー社)にいたっては、売り上げが年間1兆円を超えています。

若い方はあまり気にしないでしょうが、それ相応の年になると、毎年の検診で行う血液検査の結果で、コレステロールや中性脂肪の値が上がったり下がったりすることで、一喜一憂される方も多いのではないでしょうか。ワイドショーなどでも頻繁に取り上げられる話題ですね。

質問2
コレステロールや中性脂肪が溜まると何が問題でしょうか?

答えは次のとおりです。高脂血症や高血圧、糖尿病は代表的な「生活習慣病」ですが、これらの疾患が恐ろしいのは長期間にわたって自覚症状がほとんどなく、知らず知らずのうちに進行していくことです。

コレステロールや中性脂肪が多いだけで死ぬことはありませんが、動脈硬化を起こしやすくなったり、血管が詰まりやすくなったりします。そうすると、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが大幅に高まります。高血圧も起こりやすくなります。


質問3
コレステロールは単なる悪者なのでしょうか?

答えはノーです。前に述べたように、コレステロールが多すぎると悪者になります。しかし、コレステロールがなければ、私たちは生きてはいけません。たとえば、私たちの体を構成している約60兆個の細胞1個1個のまわりを囲っている細胞膜には、コレステロールは欠かせません。

また、男性ホルモンや女性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのように、私たちが生きていくうえで必要不可欠な物質も、実はコレステロールから合成されるのです。このように、コレステロールは適度に存在しなければなりません。

私たちの体の中で起こるコレステロールの生合成は、医学的にとても重要であるばかりでなく、生命科学の研究者にとってはとても興味深い研究対象です。私たちの体には、体内のコレステロールの総量を一定の範囲内に保つようなメカニズムが備わっています。

「ホメオスタシス」ですね。つまり、食物からコレステロールをたくさん摂取したときには、自分で(主として肝臓で)コレステロールを作るのを抑えます。

逆にコレステロール摂取が少ないときには、自分でドンドン作るのです。この調節がうまくいかなくなって「ホメオスタシス」が崩れた状態が高脂血症です。


アスピリン
ヤナギから生まれた大衆薬の王様
風邪をひいて熱や頭痛に悩まされたときに、読者のみなさんはまずどうしますか?医師にてもらう前に、おそらくは町の薬局で風邪薬を買って服用するでしょう。その中に入っている熱・鎮痛薬の代表といえばアスピリンです。

アスピリンは、みなさんもその名前をきっとご存知のように、医師の処方箋がなくても購入できる大衆薬の中でも、最もポピュラーなものの一つです。

驚かれるかもしれませんが、アスピリンの起源は、実はヒポクラテスのころに遡ります。ヒポクラテスは、ヤナギの樹皮を熱や痛みを和らげるために、その葉を分娩時の痛みを和らげるために処方したといいます。

また、ディオスコリデスの『マテリア・メディカ』には、「シロヤナギの葉を煎じたものは、痛風に効果がある」との記述があります。

一方、古代の中国では、歯が痛いときにヤナギの小枝で歯の間をこすっていたようです。これが「楊枝」の起源だと言われています。確かに楊の枝と書きますね。「柳の下にいつも泥鱈はいない」とは、偶然の幸運は何度もあるものではないことのたとえですが、「ヤナギの下のアスピリン」は科学者たちの道な努力の結晶なのです。


ニトログリセリン
「ダイナマイトの生みの親」ノーベルの複雑だった心境
みなさんは、「ニトログリセリン」から何を連想されるでしょうか?

ほとんどの方が「火薬」や「ダイナマイト」を思い浮かべられるでしょう。

でも、読者のみなさんの中に狭心症の罹患歴をお持ちの方がいらっしゃれば、発作のときに舌の下でしゃぶる錠剤(舌下錠)や、発作を抑えるために胸などに貼るテープ状やパッチ状の貼り薬とすぐに答えられるでしょう。

心臓の血管の狭窄などが原因で血流が低下して心筋が酸素不足となり、心臓部や胸部に起こる激痛の発作です。ニトログリセリンには血管拡張作用があるため、こうした症状に効果があるのです。

話はノーベルの時代にタイムスリップします。ニトログリセリンは爆発性の高い油状の液体です。後のノーベル賞を創設するA ・ノーベルは、これを珪藻土にしみ込ませて爆発しにくくしました。ダイナマイトの誕生です。

当時のダイナマイトエ場で、あることがうわさになりました。狭心症の持病を持つ労働者が、仕事をせずに自宅で静養しているときには発作を起こすのに、工場で働いている平日には発作を起こさないのです。

このうわさを知った医者たちが、ニトログリセリンが狭心症の治療に有効であることを証明したのです。1870年代の終わりのことです。

これにはもう1つ興味深い逸話が付随します。ノーベルは、ニトログリセリンを安全に運搬するためにダイナマイトを開発し、そのおかげで巨万の富を築きました。もちろん、ダイナマイトはトンネル工事や炭坑などで使われましたが、戦争でも大きな威力を発揮しました。

ノーベルは「死の商人」と呼ばれるのは不本意だったと思われ、この気持ちがノーベル賞、特に平和賞の設という遺言につながったのです。

彼は晩年に狭心症を患い、自分自身がニトログリセリンの恩恵をうけたとのことです。知人に宛てた手紙の中で、次のように複雑な心境を語っています。

「私が医者からニトログリセリンを処方されるとは、何という運命のいたずらだろう」


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