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解熱剤や鎮痛剤で症状が悪化するって知ってる?薬の正しい飲み方について

解熱剤や鎮痛剤で症状が悪化するって知ってる?薬の正しい飲み方について

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解熱剤で下げるとかぜは治りにくい

風邪とくすりとにかく肝心なことは、ふだん、よほど健康状態や栄養状態が悪くないかぎり、「かぜ、インフルエンザにかかってもこわくない」という自信をもつことです。

かぜウイルスは冷たいところが好きですから、熱はウイルスや細菌をやっつけるための重要な防御反応になります。「さむけ」や「ふるえ」は、低すぎる体温を「上げよ」と「脳」が指令した結果、筋肉が収縮するからです。

こうして苦労して熱を出すと、かかった本人もしんどいですが、かぜやインフルエンザウイルスはもっとしんどい。せっかく上がった熱を解熱剤で無理に下げると、一時は楽ですが結果的には逆効果になります。

抗炎症解熱剤はかぜやインフルエンザより危険
解熱剤の中でも強力なのが抗炎症解熱剤。ウサギに細菌を注射して感染させ、アスピリン系の抗炎症解熱剤を使ったウサギと、使わなかったウサギを比較しました。使わなかったウサギ7羽は、はじめは高熱でしたが、途中から解熱し、5羽が生存しました。

ところが、使ったウサギ9羽は、はじめは熱が低いのですが、途中から逆に高熱になり、すべて死亡しました。

はしかウイルスに似たウイルスをウサギに接種した実験でも、解熱剤のメフェナム酸(商品名「ポンタール」など)を使用したウサギのほうが、解熱剤を使用しなかったウサギよりもリンパ節中のウイルス量が100~1000倍も多くなり、死亡したのです。

その後多くの動物実験を集めたところ、9つの医学文献があり、合計15の実験が行なわれていました。それを集計したところ、合計するとウイルスや細菌などを感染させただけでは161匹中15匹(9.3%)が死亡しただけでしたが、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)を使用した場合は179匹中82匹(45.8%)が死亡していました。

これによると抗炎症剤がかぜよりも10倍危険ということになり、そう結論して間違う確率は1億分の1より少ない、つまり間違いはほぼゼロという結果でした。

中外製薬がスポンサーとなって行なわれた抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」の臨床試験で、抗炎症解熱剤を使用しなかった224人は、平均4.4日でかぜ、インフルエンザ様の症状がなくなりました。一方、抗炎症解熱剤を使用した27人は、症状が消えるまで平均5.8日かかりました。

抗炎症解熱剤を使用した群のほうが治るのが遅かったのです。
この結果は動物実験の結果と一致しています。多数が使った中で重症になった人が「インフルエンザ脳症」と呼ばれ、インフルエンザは「脳症」を起こすから怖い、と恐れさせられました。

同じ状態を以前は「ライ症候群」「原因不明の脳症」と言い、脳症になるのは、インフルエンザよりも普通のかぜなどウイルス感染症が圧倒的に多かったほどです(インフルエンザの3倍)。

それを突然「インフルエンザ脳症」という言葉に変えて呼ぶようになりました。タミフル登場(2001年)の直前です。タミフルの露払いキャンペーンではと疑いたくなります。

09年のパンデミック騒ぎでは、脳症より「肺炎」(実は急性呼吸窮追症候群:ARDS)の合併が怖いと報道されていました。脳症でも肺炎(ARDS)でも、肝障害や腎障害、横紋筋融解症など多臓器不全を伴い、体のあちこちが傷害されます。どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。

インフルエンザに限らず感染症で出た熱を解熱剤(特に抗炎症剤)で下げ、炎症を抑えると、ウイルスが増えます。するとウイルスをやっつけるために体が反応してさらに高熱にし、体内の化学物質(インターフェロンや腫瘍壊死因子などサイトカインという)を増加させます。

サイト力インは血液中を巡っているので、過剰になればウイルスだけでなく血管の内壁が破壊されます。そのため脳だけでなく肝臓や腎臓、肺、心臓、膵臓、筋肉、血液系まで傷害されるのです。

サイトカインが過剰になり全身を攻撃するようになった状態をサイト力インストーム(サイトカインの嵐)と言います。

米国でアスピリンの使用規制でライ症候群が起きなくなり、日本ではボルタレンなどのきつい解熱剤の使用制限で、タミフル導入前には死亡する重症脳症が激減していたことから、いかにこれらきつい解熱剤が悪さをしていたかが伺えます。

「やっぱり危ないタミフル」では、スペインかぜで多数が死亡した主な原因がアスピリンだと指摘しましたが、米国でライ症候群を研究していた学者も同じ考えを2009年に論文で述べていました。

09年インフルエンザの死者がメキシコや米国で多かったのは、イブプロフェンというきつい解熱剤が市販され多用されているからと、考えています。


頭痛薬や消炎鎮痛剤は不調を悪化、慢性化させる
鎮痛剤は体を冷やします
熱がある、頭が痛いというときに、つい手が伸びるのが常備薬。つらさを緩和してくれるありがたい存在ですが、常用や長期にわたって使うことは避けるべきです。

というのも、西洋医学で処方されるほとんどの鎮痛剤は、交感神経を刺激して体を冷やしてしまうからです。体を冷やして血流を悪くし、血管を収縮させることで、熱まひや痛みを麻輝させて一時的に楽にしているだけで、体の不調を根本的に治すわけではありません

そもそも、発熱や痛みはトラブルに対する体の正常な反応です。風邪をひいて熱が出るのは、侵入してきたウイルスをやっつけるために体温を上げて、白血球を増やしているためです。その熱を解熱剤によって下げてしまうのは、せっかく治そうとしている体の反応を抑え込むことになってしまいます。

消炎鎮痛剤を使い続けると、肩こり、腰痛が悪化、慢性化する
痛みや腫れは治癒反応で、体が病気と闘っているプロセスです。疲労した筋肉を回復させるために血流障害を改善しようと、血管を拡張させて血流を増やします。

同時に、知覚神経に敏感に反応する働きをもつアセチルコリン、プロスタグランジン、ヒスタミンなどを増やして、痛みや腫れが起きるのです。これが肩こりや腰痛の原因です。

温めて血流をよくしておけば、痛みは次第に消えるケースが多いのですが、消炎鎮痛剤を貼ったり、塗ったりすると、せっかくよくした血流を再び悪くすることになります。

消炎鎮痛剤には、血管を閉じて血流も痛みも止める働きがあり、プロスタグランジンを阻害します。つまり、治癒への段階をストップさせてしまう薬なのです。

このように、薬を使うと、一時的に痛みや腫れが治まりますが、薬の効果が切れると、いままで以上のひどい揺り返しがきて、治癒とは正反対に向かいます。何度もこれを繰り返していると、悪循環に陥って病気が治らなくなってしまいます。

病院ではたいていの場合、痛みに対して消炎鎮痛剤が処方されますし、市販の薬もたくさんあり、抵抗なく気軽に使っている人も多いでしょう。しかし、使い続けることで、肩こりや腰痛は悪化、慢性化してしまいます。


やみくもに鎮咳・去痰薬を使わない!
麻薬性の成分の入っている鎮咳薬は長期間にわたり連用してはいけません。麻薬性の成分では依存性が出やすいからです。

たとえば、中枢性鎮咳薬のリン酸コデインなどはよく効く、つまり非常に強い鎮咳作用がありますが、これは早い話がモルヒネなど医療用麻薬の仲間なのです。もっとも、この薬を飲んでも体内で分解される量は少なく、大部分は尿中に排泄されますので数日間使うのなら習慣性や性の心配はいりません。ただし便秘の心配はあります。

鎮咳薬は咳を止める効果が高いのですが、ほかの作用も併せ持っていることを知っておく必要があります。たとえば、メチルエフェドリンのような交感神経刺激薬では心臓の機能を活発化するので、高血圧の方やお年寄りは注意が必要です。

気管支を広げるテオフィリンは、他剤との薬物相互作用が知られており、飲み合わせによってはテオフィリンの効果が強く出て、中毒に陥ることがあります。したがって、購入する際にはふだん服用している薬との相互作用について、薬剤師にかならずご相談ください。

咳止めを飲んでいても咳が止まらないという経験のある方は、早めに受診をしたほうがよいでしょう。最近ではACE阻害薬という高血圧症の治療に用いられる薬(塩酸イミダプリルなど)の副作用によって、咳が起こることがわかっています。常用している薬の中に、この薬の仲間があるとわかれば主治医に相談してみましょう。

長引く咳にはかぜ以外の疾病を疑わなくてはなりません。特に、咳をした後、ゼーゼー、ヒューヒューする、血痰が出るようになった、咳とともに異常な胸痛を感じる、咳が出て呼吸が浅いなどの症状は、気管支ぜんそくや肺炎などの重篤な疾患の恐れがあります。

最近、結核の再燃が取り沙汰されていますから、抵抗力が落ちたときは誰でもその危険性があります。3週間以上咳が続き熱もある、といった場合には早めに呼吸器科を受診しましょう。


薬を安易に飲まずに正しい使い方をしよう
(1)解熱・鎮痛薬の使いすぎは禁物
片頭痛持ちの方など頭痛が起きると、苦い思いをしながらも、ついアスピリンを内服してしまうのではないでしようか。なにしろこの薬は、痛みに対する効き目は優れているし体内での分解も早いのです。

一般薬の解熱・鎮痛薬は、安全性を考慮して医師の処方薬よりも低用量となっています。しかし、解熱・鎮痛薬は基本的に対症療法薬ですので、2~ 3回程度服用しても症状に変化がなければ、医師を受診してください。特に子ども(15歳以下の小児)では、症状によっては使用が禁じられているものがありますから、薬剤師にご相談ください。

(2)特に気をつけたい解熱・鎮痛薬の副作用
アスピリン、エテンザミドなどは、胃粘膜を荒らす副作用も持ち合わせています。この場合、胃腸薬(スクラルファートなどを配合した胃粘膜保護薬など)を一緒に服用することも大切ですが、まずは、食後に飲むことを心がけてください。

以上は副作用の症状としては軽いほうですが、ビリン疹の出る人は、イソプロピルアンチピリンに代表されるピリン系製剤は服用できません。飲むたびに皮膚の同じ場所にピリピリと痛痒い赤紫の発疹が出たことのある人は、気をつけましょう。アスピリンぜんそくの経験のある人は、ほとんどの解熱・鎮痛薬は服用できません。

以上はある程度は予測できるものでしたが、予測困難な重篤な副作用がまれにあります。かぜ薬などを飲み、激しいアレルギー反応が起こり、すぐに医師を受診しなければならないライ症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群、SJS)、アナフィラキシー・ショックです。

これらには薬剤選択性がない、つまりどの薬でも起こりうると指摘する専門家もいます。もし服用中または服用後に、自分の体に変わったことがあったら、すぐにその薬を持って受診し適切な処置を講じてもらうことです。


ぬるめのお風呂に入ると免疫力が上がって早く治る
よく、風邪をひいたときはお風呂に入ってはいけないといわれていますが、これは間違いです。実は、ぬるめのお風呂に入ったほうが免疫力が上がって風邪を早く治せます

日本温泉気候物理医学会の報告にもあるように、40度以上の熱いお湯につかると交感神経が優位になり、40度未満のぬるめのお湯につかると副交感神経が優位になります。

風邪のウイルスと戦うのは「リンパ球」です。ぬるめのお風呂に入ると、副交感神経が優位になってリンパ球が増えて免疫力が高まるというわけです。

ただし、湯冷めをすると交感神経のスイッチが入るため、交感神経のスイッチを入れないように、お風呂から出たらできるだけ早く体を拭って布団に入ることです。

逆に42~43の熱めのお風呂に入ると交感神経を高めてしまい、目がさえ、アドレナリンが分泌されて穎粒球が増え免疫を低下させてしまいます。その結果、風邪が治りにくくなってしまうのです。

手洗い・うがい、マスクでは、実際は風邪を予防できない
うがいと手洗いが奨励されるのは、口腔内や手の表面に付着した菌を洗い流す効果があるとされているからです。しかし外出先でウイルスが付着するのは、なにも手だけではありません。

衣服や靴やマフラーなどにもつきます。手だけ洗っても、他のところに付着したウイルスは洗い流せません。強力なエアーシャワーでも浴びた後の手洗いならともかく、手だけ洗っても予防の効果は期待できません

うがいだけで風邪の予防効果を期待するなら1回30秒以上、免疫力の低い人ほど頻回のうがいが必要です。なんらかの理由で免疫力が落ちている人は、ウイルスが口に入るとものすごい勢いで増殖するからです。風邪をひいてしまったら、1時間おきに1回30秒以上のうがいをすれば、症状が重くならずにすみます。

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