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ランダムスクリーニング法という新しい薬の見つけ方

ランダムスクリーニング法という新しい薬の見つけ方

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「下手な鉄砲も数撃てば当たる」方式による発見

薬を見つける方法にはいろいろありますが、ここではランダムスクリーニング(多目的スクリーニング)法により日本で見つけ出された狭心症治療薬ジルチアゼムの例を紹介しましょう。

アスピリン等の薬は、天然から見つけ出された化合物にさまざまな修飾を加えた化合物(誘導体)をたくさん合成し、その誘導体の中から解熱・鎮痛という特定の作用に絞って探索された結果、見出された薬です。

しかしその後、生化学的あるいは分子生物学的手法を取り入れることにより、微生物・植物の代謝産物や合成した化合物のひとつひとつについて、広範囲の多様な活性を調べることができるようになりました。

そのおかげで、これまで気がつかずに研究室の傍らに放置されていた化合物から思いがけない作用を見逃さずに拾い上げることが可能になりました。

このランダムスクリーニング法は、1960年代から用いられていますが、時代とともに進歩し、今では一つの化合物につき数十の薬理活性が一度に調べられています。また検査に必要な化合物量もどんどん微量になり、数ミリグラムあれば充分と言われています。

さて、田辺製薬によって開発されたジルチアゼム(商品名ヘルベッサー)は、カルシウム拮抗薬と呼ばれる薬の代表格です。これは狭心症治療薬として高い評価を得ているだけでなく、高血圧の治療薬としても広く用いられています。

この薬の特徴は、それまで知られていたいくつかのカルシウム拮抗薬(ニフェジピンやベラパミル)とはまったく化学構造が異なっていたことと、作用機序も新しいものであったことが挙げられます。

1960年代から薬を見つける手法としてランダムスクリーニング法が脚光を浴びはじめ、各製薬会社がそれぞれ独自にこれまで合成してきた化合物をもう一度この方法で調べるようになりました。その中でやがて、各社とも生物活性ランダムスクリーニング法を確立させていきました。

田辺製薬でも合成してきたベンゾチアゼピン誘導体に対し、抗うつ作用だけでなく、いくつかの生物活性を見る試験が行われました。その中に心臓の冠血管拡張作用の試験も加えられていたのです。

それが幸いし、ベンゾチアゼピン骨格の3位に酸素官能基を導入したある誘導体の中から、本来目指していた抗うつ薬ではなく、狭心症治療薬として期待できるほど強い冠血管拡張作用を示す化合物が見つかったのです。

すなわち、ランダムスクリーニング法のおかげで、これまで予想もしなかった働きを有するリード化合物を手にすることができたのです。

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