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ジェネリック市場が薬や医療品の未来を担っているが日本は未発達

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ジェネリック市場が薬や医療品の未来を担っているが日本は未発達

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薬剤費削減の決め手はジェネリック拡大

ジェネリックが未来を担っている新薬の承認促進と”旧薬”の削減を進めると同時に、医薬品費削減の切り札として注目されるのが、ジェネリック市場の拡大である。

特許が切れた先発新薬に対して、同じ成分で回し効能を持つジェネリック医薬品を安く市場に出回らせることができれば、薬剤費の削減につながり、結果として医療費削減になるという考え方

画期的な新薬は高い薬価をつけてあげて医薬品メーカーはどんどん儲ければいいし、その新薬の特許が切れれば、ジェネリックとの競争となり利益を出せなくなっても仕方がない、という欧米型の市場を目指していくわけだ。

欧米ではジェネリック市場が発達していて、特許が切れた新薬はすぐに安価なジェネリックと入れ替わって、医薬品費の抑制につながっている。

日本ではジェネリックが未発達で、新薬の特許が切れても長期継続的に使用されてきた。いきなり何割も薬価を引き下げるわけにはいかない。

どんなクスリでもそれを必要とする病人というのは必ずいるわけだから、メーカーのやる気をそぐような大幅な薬価引き下げはできない。そのため、メーカーにとっては収益が安定するが行政にとって医薬品費の削減につなげることができないでいた。

また、処方する病院側にとっても薬価の高い先発薬を使うことで、実勢価格との差を収益として得られる薬価差益が、先発薬の方が大きいため、ジェネリックを使用しない傾向が強かった。

しかし行政にとっては医薬品費をなんとか削減しなければならない。また、安価なジェネリックがあるのにみすみす高いクスリ代を払わされる患者の不満も高まっていた。

そこで先に述べた02年の「医薬品産業ビジョン」を策定したころから、厚生労働省はジェネリックの拡充を制度的に進めてきた。

これまで述べてきた特許切れの医薬品の薬価を大きく引き下げる傾向を強めたのもこのころからで、薬価差益を強制的に小さくすることで、医療機関がジェネリックを使うようにする狙いだった。

また医師がジェネリックを処方すれば点数を優遇するという施策も採った。

ただ、先にも述べたように、日本の医師は保守的な傾向が強く、ジェネリックはなかなか浸透しなかった。先進的な医師ならともかく、ジェネリックがあるのに先発薬をかたくなに処方するのが普通の医師だった。

そのためさらに厚生労働省では06年から処方箋にジェネリックか先発薬かを医師が選ぶ項目を作った。これによって医師があえて先発薬を処方するならその理由を患者に説明しなければならなくなった。

ジェネリック普及促進というビジネスチャンスを逃すな
そして07年にはジェネリック医薬品の普及促進を図るべく、「アクションプログラム」を発表した。

それまで普及の障害になっていたジェネリックヘの信頼性をより高めることが骨子となっているもので、ジェネリックの注射剤に対して不純物試験や品質に関する文献をふまえた試験検査などを実施する。

さらにジェネリックメーカーには、承認時に必要ではなかった長期保存試験や無包装状態での安定性試験などを行うように求め、また、情報提供の充実や08年度末までに卸業者への翌日までの配送100%の達成を求めている。

いずれもジェネリックに対する医師側の不安を取り除いて普及を早めようという狙いで、行政だけでなくメーカーにも普及を早めるように求めた点に、厚生労働省のジェネリックヘの本気度がうかがえる。

その結果としてアクションプログラムでは、12年度末に医薬品市場におけるジェネリックの数量シェアを30%にまで引き上げるという目標を設定した。

現在のジェネリック市場は数量ベースで16%、金額ペースで約4000億円強であることを考えると、この目標が達成されると、単純計算で約8000億円の市場になる。4000億円分か上積みされる計算になる。

これは7兆円市場の新薬のシェアがそれだけ入れ替わるわけで、金額ペースで計算してみれば、9000億円分の新薬が新たにジェネリックに入れ替わることになり、差し引きすればこれだけで5000億円の市場圧縮となる。厚生労働省の薬剤費圧縮目標の大きな柱というのはこのことだ。

そして、行政が動けばそこにビジネスチャンスが発生する、というのは世の常識。流通であろうと、公共事業であろうと、運輸事業であろうと、すべからく行政の動きは民間にとってビジネスと直結する。

今回のジェネリック促進でも、4000億円の新たなジェネリック市場を上積みすることになるわけだ。そしてそこに取り組む医薬品メーカーは国内、外資どちらでも行政にとってはかまわない。

ジェネリックは先発薬と同じ成分を使っているから、安全性や効能については実証済み。だから外資が承認申請をすれば、比較的容易に認めることができる。審査期間の短縮という施策ともあわせれば、厚生労働省の比重はよりこちらにあると考えられよう。

新たな4000億円のジェネリック市場に対して、外資がこぞって参入することは必至だし、新薬市場で消失する5000億円市場もそのほとんどは国内メーカーの特許の切れた長期収載品となることは疑いなく、新薬の面で競争力のある外資にとっては関係ない


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