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同じ食べ物でも食べる量によって薬にも毒物にもなる

同じ食べ物でも食べる量によって薬にも毒物にもなる

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薬は毒をもって毒を制す

稲作など農耕技術がなかった時代の昔、人は野生の木の実や葉物を食べたり動物や魚を獲って食べたりしていました。

天然の物でも毒物を有している食べ物があります。どういう物を食べれば腹痛やしびれなどの中毒症状にみまわれるか、長年の経験で毒物の知識を得て、また、日常生活で発熱したり痛みが生じればどういう草を食べれば症状が改善されるか、ケガをして出血した時はどういう草を患部に塗れば止血できるかなど、長年の経験で薬草の知識を得たことでしょう。

そして、人間の生命にかかわる重要な毒物、また薬物の知識を仲間や子孫に伝える必要が生じてきました。

現在のイラク周辺になる中央アジアのチグリス川とユーフラテス川の流域にシュメール人によって古代メソポタミア文明は築かれました。紀元前2000年以上前の粘土板にはくさび形文字が刻まれていました。

その文字を解読すると250種類以上の薬草などの植物性薬、180種類以上の内臓などの動物性薬、120種類以上の薬石などの鉱物性薬の記録がありました。

ナイル川流域にエジプト文明は築かれました。紀元前1552年に紙であるパピルスに書かれたものと思われる幅30cm長さ20mにも及ぶ巻物には、約700種類の植物性薬、動物性薬、鉱物性薬が書かれていました。

あくまでも推測ですが、人類は毒物や薬物の記録を仲間や子孫に残すために文字や紙などの記録媒体を発明したのではないかと思えます。

注目されるのは、薬物と毒物は完全に別々のグループに分けられているのではなく、同じものが薬物ともなり、毒物ともなっていることです。

同じ薬草でも、量が少なければ薬物として働き、量が多ければ毒物となります。例えば毒物として有名なトリカブトも少量では鎮痛剤、リュウマチ剤、強心剤としての漢方薬になります。

そのため、昔人は「毒は薬なり」とか「薬は毒をもって毒を制す」という言葉を残しています。現在の薬理学の教科書にも「副作用のない薬はない」と明記してあります。

「薬」という文字は草冠に楽と書きます。病気の症状を楽にしてくれる草ということです。楽にはなっても病気そのものが治るわけではありません。薬は毒であることの認識が必要です。

不老長寿の薬は毒物であった
昔の時の権力者は、今とは違って絶大なる権力を持っていました。そういう権力者の多くは不老長寿の薬を求めていたようです。

中国の唐の時代の皇帝たちは、丹薬という薬が不老長寿の妙薬であると信じて服用していました。丹薬とは硫化第二水銀でした。硫化第二水銀は400℃で焼くと水銀と硫黄に分離します。

その水銀を300℃に加熱し酸化すると酸化第二水銀になります。酸化第二水銀をまた400℃で焼くと水銀と酸素に分離し、この水銀が硫黄と反応すると硫化第二水銀にもどります。

当時は、薬草のような薬では燃えてしまえば灰になってしまいますが、丹薬のような鉱物の重金属は反応を繰り返しながら元の物質にもどるため、鉱物としての生命が途絶えることがないとのことで不老長寿の効果があると信じられていました。

この時代の皇帝たちの中にはミイラが発見されており、遺体を分析すると高濃度の水銀が検出されており水銀中毒が原因で亡くなっていたようです。

どんなに医学が発達しようが不老長寿の妙薬など出来るはずがありません。これは天地の法則です。現代では一般の人でもアンチエイジングと称してさまざまなサプリメントや健康食品を追い求めていますが、唐の皇帝たちと同じような運命をたどることになるでしょう。

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