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外資系医療品メーカーにとって薬信仰の強い日本市場は魅力的

外資系医療品メーカーにとって薬信仰の強い日本市場は魅力的

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日本市場は外資が狙うほど魅力のある市場なのか

米国に次ぐ世界第2位の日本市場だが、日本市場は外資が狙うほど魅力のある市場なのか。

日本の医薬品市場は国の財政の悪化を受けて、長期にわたって漸減させていく方向を打ち出していているから、せっかく参入しても効果がないということになりかねない。

そのほとんどが税金でまかなわれている(1~2割は患者負担だが)だけに、財政の健全化を目指す国としては、今後も医薬品費の削減を目指していく方向は不変である。

厚生労働省によると、04年の国民医療費は32兆1000億円にのぼる。そのうち約2割相当が医薬品費ということだ。

本来は医師による診療費の削減が本筋なのだが、これがなかなか進まない。深刻な医師不足という現実があって、診療報酬を削減することは医師の反対が強硬だ。

むろんその裏には日本医師会という日本有数の圧力団体が控えている。日本の医療がどうなってもいいのか、と言われれば、厚生労働省の役人は黙るしかない。

いわば患者が人質に取られる形で、診療費削減は遅々として進まないどころか、今後、毎年1兆円ずつふくらんでいくという。実際、94年段階での国民医療費は25兆8000億円だったから、10年間で6兆3000億円も増えている。

何も手を打たなければ、これが加速していくことは火を見るより明らか。いうまでもなく、急ピッチで進んでいく高齢化社会の影響で、5人に1人が60歳以上の高齢者という時代が間近に来ている状況から、この医療費の増大は食い止められない。

そこで、行政は薬剤費の引き下げを強化していく。弱いところから取る、という発想は役人の典型で、医薬品の生命線である製造承認の権限を背景に、2年に1回、医薬品の価格を全面的に引き下げているのだ(ごくまれに引き上げられることもあるが、ほとんどが引き下げ)。

おおよそ年度末に薬価の見直しが行われ、08年には2年ぶりの薬価引き下げが、おそらく大規模に行われることになる。

ちなみに06年の薬価引き下げでは、業界平均で6.7%の大幅引き下げだった。

ほとんどが引き下げられたわけだが、中でも下げ幅が大きかったのは、大手ではアステラス製薬の「セフゾン」が15.7%、「ルナール」15.5%、武田薬品の「タケプロン」15% 、「ペイスン」15.4%、エーザイの「パリエット」15%、中外製薬の「タミフル」15% など。

2年でこれだけの値引きが強制的に行われる業界はほかにないだろう。
もちろん08年春に行われる次の薬価引き下げは、これと同じくらいか、それより厳しいものになることは必至。

おおむね、1回の薬価全面引き下げで1000~2000億円の薬剤費圧縮効果があるといわれるから行政にとっても譲るわけにはいかない。

医療費全体からみれば小さなものだが、行政にとってはとこしか削るところがないのが現状だから、日本の医薬品市場は今後も大きく伸びることは考えられない

企業努力で伸ばしている現状にも限界がある。外資がこぞって参戦するほど魅力のある市場か、という点に疑問が残る。


外資医薬品メーカーにとって日本市場の魅力はほかにもある
まず日本での薬価が他市場に比べて高いということ。日本の薬価は米国の1.49倍、英国の3.25倍、フランスの3.22倍と高い水準にある。

これは94年のデータでやや古いもので、現在は相次ぐ薬価引き下げなどでその差は接近しているが、それでも03年段階で米国の1.2倍程度までしか下がっていないという。

英国やフランスの3倍はこれを切っていると思われる。むろん為替の問題や医療費算定の基準の違いなどがあって、一概にはいえないが、日本市場に参入すればそれだけ高い利益を確保できることだけは間違いない。

また、日本人の薬信仰もその背景にある。薬は効くもの、高いもの、医者は間違わないもの、という固定観念が長く日本人の間に広がっていて、医療機関のいいなりに高額な薬を服用していた。風邪を引いただけで何種類もの薬を服用するのは日本人だけだという。

他の国の人は風邪引いたら黙って寝て直すのが普通。むろん日本では保険制度が充実しているから、必要のない薬も処方されるままに服用するし、かつてはまったく効能のない薬をがんの特効薬と信じて服用していたケースもあった。ある時代にはメーカーも行政も安全第一で効能は次という方針があったのである。

そうした薬信仰が高齢化社会の進展でさらに強まっていく。
この高齢化社会の進展も医薬品市場に大きく関係してくる。2年に1回大幅な薬価引き下げを続けているのに、医薬品市場は劇的に縮小するということはない。

2けた近い大幅引き下げが繰り返されれば、10年経てば市場は半分になってもおかしくはないのだが、実情は減少どころか、拡大している。
それはなぜかというと、薬価という単価の下落を企業努力による量の拡大でカバーしているからだ。

だから結果的に市場は維持される。しかも、今後はその量を求める層が増加する。つまり高齢化社会の進展で、医薬品を必要とする疾病を抱える高齢者が増加するということだ。需要の絶対数が増えていくわけで、行政が導きたい医薬品市場の縮小を押しとどめる効果が出てくるだろう。


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