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ピカ新やゾロ新とは?薬の中でも違いが区別されている

ピカ新とは?

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ピカ新は画期的な新薬
ピカ新とは、新薬の中でも、特に新規性・有用性の高い医薬品で、従来の治療体系を大幅に変えるような独創的かつ画期的な医薬品のことです。

このような医薬品は、作用機序から効能までのすべての面でひときわピカピカと輝いているため、ピカ新と呼ばれています。欧米では、ファースト・イン・クラスと呼ばれます。

日本では、このようなピカ新の薬価算定において、画期性加算が付加されることもありますが、次の3つの要件を満たす必要があります。

① まったく新しい着想によって研究・開発された薬である。
② 既存の薬と比較して、明らかに高い有効性または安全性をもつことが客観的かつ科学的に実証されている。
③ 対象疾患の医療体系に重大な影響を与えることが予想され、治療方法の改善・進歩への著しい貢献が期待される。

このようなピカ新は、たとえば、治らないとされた病気を治したり、手術をしなくてもすむようにするなど、社会に大きな影響を与えることになる画期的な新薬です。


主なピカ新
主なピカ新には、高脂血症の治療薬プラバスタチン、糖尿病性の末梢神経障害治療薬エパルレスタット、免疫抑制薬タクロリムス、消化性潰瘍の治療薬シメチジンなどがあります。

たとえば、胃潰瘍(消化性潰瘍)の分野では、従来は胃酸から胃の粘膜を保護したり、胃酸を中和したりする薬が、主流でしたが、それに対してシメチジンは、ヒスタミンが胃壁細胞に入ることで胃酸が分泌されるのを研究し、そのヒスタミンをブロックして胃酸の分泌を抑えることで胃潰瘍を治療するものでした。研究・開発の着想が新鮮な、独創的なピカ新といえるでしょう。


ゾロ新とは?
ゾロ新とは、新規の化学構造、治療効果をもつピカ新に対して、既存の新薬の有効成分の化学構造を少し変えただけの医薬品で、改良型新薬ともいわれています。

新しく有用な化学構造を、膨大な時間と人を費やして、試行錯誤して発見しなければならないピカ新に対して、ある作用をもつ化合物の基本的な化学構造がわかっていれば、その構造を少し変化させることによって、比較的簡単にゾロ新を発見できるというわけです。

ゾロ新は、ピカ新をまねて開発されていますが、もとのピカ新より改良されていることが多いです。たとえば、「ピカ新以上の作用の強さ(効き目)をもっている」「ピカ新にはない効果がある」「副作用がピカ新より少ない」「ピカ新より服薬回数が少ない」などです。日本では、このような有用なゾロ新の薬価に対して、有用性加算が付加されています。有用性加算が付加されるには、次のいずれかを満たす必要があります。

① 既存品に比べて明らかに高い有効性または安全性が客観的・科学的に実証されていること。
② 製剤学的工夫などにより、既存品に比べて明らかに高い医療上の有用性が期待されること。


主なゾロ新
たとえば、血圧を下げる効果をもつACE阻害薬では、ピカ新のカプトプリルに続いて、11製品ものゾロ新が開発されました。これらのゾロ新の中には、ピカ新よりも、効果が強い、副作用が少ないなどの有用な特徴があり、有用性加算が付加されたものもあります。欧米では、その薬効の中で、高い優位性をもつ新薬をベスト・イン・クラスと呼びますが、必ずしもピカ新がなるわけではなく、ACE阻害薬では服薬回数の少ないレニベースがベスト・イン・クラスになりました。


ブロックバスターとは
ブロックバスターとは、全世界での年間売上高が10億ドルを超える新薬のことですが、年間売上高5億ドル以上で定義することもあります。ブロックバスターは、まったく新しい作用機序をもつピカ新であることが多く、その対象領域でダントツの売上高を誇っています。

医薬品企業の薬のうち、収益に貢献するものは、10種のうち3種程度といわれています。そのため、医薬品企業の多くがブロックバスターからの収益に依存している現状は各企業とも収益の約70%がブロックバスターによるものであり、医薬品企業の将来はブロックバスターにかかっているといっても過言ではありません。

一方で、ブロックバスターに依存した経営の見直しを始めた医薬品企業もあります。世界最大の医薬品企業であるファイザーや、日本の大手医薬品企業であるアステラス製薬は、今後このようなブロックバスターはなかなか生まれないとの判断のもと、治癒満足度が低い領域(アンメット・メディカルニーズという)に軸足を置いた事業展開を行う方針を示しています。


代表的なブロックバスター
表に最近のブロックバスター上位10製品を挙げています。第1位はファイザーの生活習慣病に関連する高脂血症を治療する薬、リビトールです。

このリビトールは、第2位で61億ドルの売上を誇るグラクソ・スミスクラインの喘息治療薬アドベアの2倍を売り上げています。リビトールはもともとワーナー・ランバートの製品であったが敵対的買収によりファイザーが手に入れています。

薬効別に見ると、リビトールのほか、高血圧症治療薬のノルバスク、デイオバン、抗がん薬のリッキサン、うつ病など精神病治療薬のジプレキサ、リスパダールなど、現代社会において患者数の多い病気の治療薬が多く見受けられています。

世界市場における主なブロック・バスターの売上高
1 リビトール ファイザー 高脂血症治療薬 129億ドル
2 アドベア グラクソ・スミスクライン 吸入喘息治療薬 61億ドル
3 ネキシウム アストラゼネカ 抗潰瘍薬 52億ドル
4 ノルバスク ファイザー Ca拮抗薬 49億ドル
5 ジプレキサ イーライリリー 統合失調症用薬 44億ドル
6 ディオバン ノバルティス AⅡ受容体拮抗薬 42億ドル
7 リスパダール ジョンソン&ジョンソン 統合失調症用薬 42億ドル
8 アラネスプ アムジェン 貧血治療薬 41億ドル
9 リツキサン ロシュ 抗がん薬 39億ドル
10 エフェクサー ワイス 抗うつ薬 37億ドル


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