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手術後の経過を左右するリハビリと栄養補給について

手術後の経過を左右するリハビリと栄養補給について

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手術後の経過を左右するリハビリと栄養補給について
手術後のリハビリについて
さて、手術後にするリハビリとしては、まず痰を出す練習をします。これをしないと、水分を摂取したときに間違って気管に入った時などに、うまく出しきれずに肺炎を起こしやすいのです。

手術後には創の痛みがあるため、咳払いの時には大きな苦痛を伴います。術後の肺炎や無気肺の原因は、殆どが痰の喀出困難です。最近の腹部手術では手術前に、術後の鎮痛を目的とした硬膜外チューブというチューブを挿入することが多いので、以前に較べるとかなり楽になったようにおみうけします。

つぎに、痰をうまく出すリハビリをしながら、歩行の練習を開始します。まず起きあがって座る練習をし、その後ベッドの外に足を出してから立ち上がる練習に入ります。臥位でいる時間が長かった人は、筋力の低下が著しいからです。

このように少しずつ段階を経て歩行の練習をします。また最初の歩行の練習には、歩行器を使うこともあります。そして、歩けるようになった頃、おなかの具合もよくなりガス(おなら)が出るようになります。そこまで行けば、術前に挿入した経鼻胃管を抜くことができます。

また、大きな手術では、術中から膀脱に管(バルーン)を入れ、尿が自然に出るようにしています。そして術後、尿量と尿意が安定してきた際には、できるだけ早期に管を抜かないと膀脱炎を起こす可能性があるので、術後2日目くらいを目標に管を抜きます。

食事のリハビリとしては、一般に、まず水を飲みます。誤飲することなく水を飲めれば、ジュースや水溶性の飲食物を飲みます。また流動食を1~2日間食べた後、お粥の米の量を増やしていく方法をとります。そして1、2週間後にはきちんとした食事が摂れるようになります。

これらのリハビリは、手術後、病室に帰ってからすぐに開始します。手術術式により、患者さんのダメージも相当な違いがあり、画一的に論じることは出来ないのですが、とにかく積極的に挑戦していくことが大事といえるでしょう。


手術後の栄養補給
手術の直後から、医師たちは患者さんの栄養供給をどう確保するかについて対策を施します。手術そのものが成功しても、その予後がどうなるかは、栄養補給がうまくいくかどうかが大きく関わってくるからです。

人間の体の中では、栄養素を作り出す「同化」と栄養素を燃やしてエネルギーにかえる「異化」がたえず行なわれていますが、手術直後はほとんど「異化」が進んでいるので、外から栄養を投与する必要があります。

胃や腸の手術直後は、食事をとることができません。腸が数日間麻痺するからです。

手術直後の腸管はおなかを閉める時すでに若千の動きがあり、腸の内圧検査でも動きをとらえています。ただし、胃・小腸・大腸がそれぞれ、不規則でちぐはぐな動きをしているがためにスムーズな消化ができないのです。

したがって点滴で栄養補給をしなければなりません。手術の後というのは身体の中の細胞がどんどん壊れているので、それを防ぐために1日1600カロリーから2000カロリーは必要になります。そのためには、1日1500から2000mlの点滴が必要になります。

しかしながら、手や足の末梢静脈からの点滴はカロリーの高いものは投与できません。10%以上の高ブドウ糖溶液の点滴を使用すると、静脈が糖の刺激や浸透圧によって静脈炎を起こすからです。

静脈炎を起こすと2度とその手からは点滴ができなくなるので、抹消静脈からの点滴には限界があるというわけです。したがって糖液などは5%程度ものを使用します。

また大腸の手術後、あるいは急性膵炎の手術後のように、1週間以上食事ができない場合には、抹消静脈からの点滴だけでは間に合わないので、中心静脈から栄養を補給します。

これは鎖骨の少し下から針を刺して、鎖骨下静脈を穿刺して、カテーテルの先端を心臓に近い場所の静脈において、輸液を投与する方法で、糖の濃度の高い輸液=高カロリー輸液(IVH)が可能になります。

中心静脈栄養ならば、高濃度の糖液が、たくさんの血液の中に攪拌され薄い濃度となって、血管に炎症を起こすことなく全身にゆき渡るようになるのです。

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